精神科外来チェックリスト

 ★うつ病 不安症 パニック症

気分が落ち込む。意欲が出ない。涙ぐむ。体調が悪くて仕事行けない→SSRIで治療開始 

男性 エスシタロプラム0.5錠から  女性 セルトラリン1錠から

吐き気が強い、焦燥が強い、自殺念慮があるならミルタザピン0.5錠から(眠気注意)

発達障害、C-PTSD由来のうつはデュロキセチン0.5錠から

吐き気にはドンペリドン併用(プリンペランは中枢移行しやすく錐体外路症状出やすい)。

ベンゾと異なりSSRIは依存性がないが、効果が出るまで2~4週間かかる。最初の3か月は症状に一進一退。半年で落ち着く。眠気が強くなってきたら減量を考慮。 1年後から薬を減らしていく(1か月に0.5錠ずつ)。


  うつの漢方(気虚を引き締める黄耆、人参を含む)

補中益気湯(虚)だるさがあるとき  六君子湯(虚)胃が悪く食欲ない  加味帰脾湯(虚)熟眠作用(弱いレスリン)

  不安症の漢方(鎮静作用のある桂枝、竜骨、牡蠣、柴胡が主剤)

桂枝加竜骨牡蠣湯(虚)うつ、不眠、性欲低下がある時 柴胡加竜骨牡蠣湯(実)イライラを伴う時  抑肝散加陳皮半夏(虚)苛々、焦燥感、不眠に対して 

 パニック症の漢方

半夏厚朴湯(虚→中) 発作時は四逆散(中→実)ソラナックスの代用、緊張や苛々に  効果不十分なら甘麦大棗湯(実)クエチアピンの代用、パニック、身体症状症、転換症にも適応

★漢方の実証は胃腸の強い人 妊婦、高齢者、胃の弱い人は虚証。虚から処方していく。間違えて実を出すと流産、嘔吐、動悸、頭痛の原因。昼は飲み忘れるので2包朝夕前で開始。カンゾウの重複で低カリウム症、高血圧の恐れ(甘麦大棗湯は特に注意)

★同系統の薬(漢方も)は2種類まで 睡眠薬、抗不安薬はあわせて3種類まで

 適時増減の眠剤は2倍量まで可。65歳以上はベンゾ非推奨。エスシタロプラム10㎎、エスゾピクロン2㎎、ベルソムラ15㎎まで。マイスリーはうつ、不安症にのみ(統合失調症、双極性障害では不可)


 抗うつ薬は18歳未満の自殺リスクに注意。特にパロキセチン、妊婦FDAでDランク、離脱症状強く中止しにくい。抗うつ薬とエクフィナ(パーキンソン治療薬)等MAO-B阻害薬は併用禁忌。ラメルテオン/メラトベルはフルボキサミンと併用禁忌 キノロンで濃度上昇


 ベンゾジアゼピンは重症筋無力症、急性閉塞隅角緑内障に禁忌(フォローされている緑内障はOK) 肺気腫、喘息、脳血管障害は呼吸抑制に注意。反跳性の不安、不眠。


 妊娠時のSSRIの危険性説明

 新生児遷延性肺高血圧(死亡率10~20%)のリスクが2倍。「分娩で1000人に1~2人起こるので、服薬していないと1000人中1人なのが、服薬していると1000人で2人程度に確率が上がる」

 乳汁移行  向精神薬の最大量の半分以下ならおおむね可と言われているが、乳児の呼吸、傾眠を十分観察して→ 母乳を与えるメリットとデメリットを勘案して決める。

 妊娠する可能性のある女性には、セルトラリンないしエスシタロプラムを選択(FDAランクC) マグミット以外の下剤は禁忌 妊婦は虚証なので実証の漢方は使えない。不安、抑うつ気分に半夏厚朴湯、意欲低下、倦怠感強いなら補中益気湯、不眠主体なら加味帰脾湯


★躁うつ病

リチウムは開始時に1~2週間ごと。安定しても3か月に1回血中濃度。中毒初期に意識障害。

リチウムは妊娠、てんかん、腎障害(透析、塩分制限)に禁忌。長期投与で甲状腺機能低下。NSAIDsと併用で濃度上昇。発熱、脱水時に注意! 

デパケンは妊娠、カルバペネム禁忌。投与後6か月以内に肝機能をみる。高アンモニアの意識障害、肝炎、血小板減少に注意

ラミクタール 高率に皮疹。自己判断で中止/再開することがあるので注意

テグレトールは相互作用多い。B肝、C肝、HIVの治療薬、抗血小板薬と併用禁忌


★ADHD

片づけられない、遅刻、忘れ物(不注意)、ゲーム依存、夜更かし、朝が弱い等。

自己質問紙(CAARS 自閉症を鑑別するためAQ) うつ状態の併存→まずうつの治療から

アトモキセチン20~40mg1日2回or1回で開始。小児は10mg1日2回から。効果が出るまで1か月。副作用はSNRIと類似。吐き気、頭痛、眠気。 

不注意より多動が目立つならインチュニブ1mg夕から。眠気、血圧低下に注意。


アトモキセチン→心血管障害に禁忌 中等度以上の肝障害で用量半分

インチュニブ→妊娠、2度以上の房室ブロックに禁忌

コンサータ→チック、甲状腺機能亢進、不整脈、頻拍に禁忌


てんかん発作

レベチラセタム1A生食100㏄1時間かけて


★PMS 

セルトラリン0.5錠から(黄体期のみ投与で有効)ホルモン補充療法も 抑うつが強いなら当帰芍薬散(虚) イライラが強いなら加味逍遙散(中)


★LOH症候群 

遊離テストステロン 8.5pg/ml以下で男性更年期(うつ病と類似)40歳以降のうつ病で疑う。テストステロン低下。体重増加も起こりうる。

補中益気湯(虚)牛車腎気丸(虚)→八味地黄丸(中) ホルモン補充療法も


★むずむず足症候群

まずは貧血、腎不全の除外。カフェインは憎悪因子 心因も除外

第1選択はビ・シフロール(妊婦禁忌 突発性睡眠があり運転禁止) 効果不十分ならレグナイト(透析禁忌 肥満注意 調節障害など眼症状) 貼り薬でニュープロパッチ


★CPAPの適応 一泊二日のPSG検査でAHI20以上or自宅の簡易PSGでAHI40以上(AHI=無呼吸、低呼吸の合計回数)


★半年に一度は採血。血糖、肝機能、甲状腺、リチウム濃度、貧血に注意。オランザピン、クエチアピンは3か月に1回HbA1c

心電図を初回と年に1度 ほぼ全ての抗精神病薬、抗うつ薬でQT延長に注意 QT延長 440ms以上で減薬を検討 500以上で薬剤中止

メマンチンは高度徐脈、完全房室ブロックに注意  ADHD薬も心臓に影響


甲状腺 TSH 8以上、0.3以下でコンサルト

プロラクチン 70以上で無月経、乳汁分泌が起こる

AST ALTは基準値の2倍以上は注意。100を越えたら中等度肝障害として扱う。薬剤性肝障害は服薬後60日以内に起こる。デエビゴは中等度以上の肝障害で用量減らす。

ラツーダ、アリピ、レキサルティは便中に、リスペリ、オラン、クエチは尿中に多く排泄

透析中に禁忌→リチウム、インヴェガ、SNRI


フェリチン50以下で潜在性鉄欠乏によるうつ症状があり得る。

鉄欠乏→血清鉄、フェリチン、TIBC/UIBC

大球性貧血→VB12、葉酸 出血性→便Hb 網状RBC 腎性→EPO 


HIV薬、抗真菌薬、クラリスロマイシンは飲み合わせ注意。ベンゾの作用増強、ラツーダ、ブロナンセリンは併用禁忌、ベルソムラはクラリスロマイシンに禁忌。


精神疾患を申告すると公安委員会へ診断書を提出。内服していても運転に必要な能力があるかどうかで判断。ただし運転の推奨はできない。

抗精神病薬、三環系、四環系、テトラミド、レスリン、ミルタザピン、フルボキサミンは運転禁止。(それ以外のSSRIとSNRIは十分注意して運転可 眠気などの症状があれば禁止)

75歳以上の免許更新で認知機能検査

HDS-R20点以下→認知症で取り消し HDS-R21~25点→半年後に再検査

ADAS10点以上で初期認知症疑い



 診察の基本姿勢

ゆっくり低いトーンで話す。感情的にならない。

まずは信頼関係を作る。最後の「。」までしっかり話を聞く。味方だと思ってもらう。

7割は相手に話してもらう(こちらが話しすぎない)

あいさつ  おまたせしました / 今日来ていただいてよかったです(うつ病で「この程度のことでかかるのは申し訳ない」と思っている場合が多い) / お気をつけてお帰りください。


対話の型

頷き、は行の相槌(ほう、へえ、ふうん、はあ)の使い分け→対話を促す。

「そこをもう少し詳しく説明してください。」→会話を深める。

「~ということでしょうか」と話をまとめる。→方向性の修正

「一番大事な問題はどれでしょう」→今日話すべき問題を絞る。

話す時間の枠を決める。次回予約やまとめの話をする。長く話させすぎない。

問題を整理し、いつ中断してもいいように。最後に大事な問題を語りだすことも。

良いところを認め、褒めて促進する。良くないところをむやみに否定しない。

言葉の裏の思いを汲み取る。Ex. 家族は心配してくれてる→それが負担になっている。


自分の価値観をいったん置く。正論が良いとは限らない。

相手が聞き飽きていない言葉を選び、いつもと同じではない反応を引き出す。

相手が自分で気づけるように促していく。(ソクラテスの産婆術)

対話の中で、生きやすくなるヒント、希望を一緒に探す。

どうにもならない!から、まあ良いかと思えるように。

相手の反応をみながら適度なユーモアを入れる。真剣に対立しないように。


まず精神疾患の知識をつける。それだけで怖さや苦手意識は薄らぐ。患者さんの世界に歩み寄る。こちらから心を開く。

可視化して説明する。問題を箇条書き、図で示す。疾患や薬の説明は、本やツールを使う。それだけで信頼度が増す。専門以外のこともちゃんと説明したうえで専門医に紹介する。


診察の手順

睡眠、食欲、便通、環境の変化、家庭、仕事はどうですか

うつ病の自己評価尺度(CES-D等)、疾患説明を定期的に行い、客観的に評価

採血や心電図をする理由、必要性を伝え、結果の説明をしっかりする。

1~2週で再診する場合は、薬の変更、増減、副作用チェック、家族や会社との話し合い等


患者の体調、予定を意識して治療計画(就職進学など生活の節目に処方を減らさない)

副作用の説明(焦燥、眠気、ふらつき、皮疹などアレルギー)。

自殺の予見性があれば予防措置(入院を勧めるなど)をとったことをカルテ記載

運転の禁止。妊娠時の催奇形性について説明したことをカルテ記載。


言ってはいけないこと。

他の病院の悪口を言わない(後で診た医師は後出しじゃんけんでよくわかる)

また悪くなったら来てください(悪いから来ているけど、全部は説明できない)

たいしたことないですよ。私も同じ経験があります(他者の苦しみを完全に理解できない)

仕事を辞めた方がいい(プライベートに踏み込みすぎない)

ひどい職場ですね。変わった両親ですね。(変わった両親でも代わりはいない)

難しいと思ったら距離をとる。スタッフ間で共有。独りで抱え込まない。

自分のプライベートが忙しいときは無理をしない。

忙しいときは対応が疎かになりトラブルになりやすい。

家族への説明は本人の同意が必要。電話で病状説明はしない。


クレーム対応

大声を出される。突然立ち上がった→すぐ逃げて 人を呼ぶ。

言い返さない。相手の思いを聴く。事実関係を確認。事実かどうかは置いておいて、不快に感じさせたことについて謝る。動揺しない。低い声でゆっくり話す。

普段から待ち時間は30分以内にするように(越えるとクレームの頻度が増す)