神経発達症 療育

ーその人の世界を知る、こだわりを知るー

 発達の凸凹がある子どもに限りませんが、療育は早くはじめるほどよいです。歩き出して間もなく、言葉がなく、人や物に目が止まらないで目線がすーと流れる段階の子どもは、周囲の世界をうまく把握できていません。彼らにとって外界はあいまいな情報が多すぎてまったく処理しきれないのです。空間の概念は、具体的な目じるしがないと理解が難しく、時間の概念も分かりづらく、未来の計画が立てられず不安が高じたり、過去の体験が容易にフラッシュバックします。

 周囲の世界の雑多な情報を遮断するために、常同行為(手をひらひら、指しゃぶり、ぴょんぴょん跳ねる)による反復刺激をおこなっており、これが最初のこだわりです。自分で生み出す一定の入力によって、混沌とした外界からの刺激に対するバリアーを作って、不安をやわらげたいのです。


 まず、この段階では、わたしたちが有害な存在ではないことをわかってもらい、同時にその子が何を好み、何を嫌うか知る必要があります。発達レベルや特性がおおまかにつかめるまで、後ろにつき従い、子どもと同じ目線で周りを眺めてみる。同じ行動をとってみる。同じ姿勢、位置、視点に立つことで、子どもが世界をどう見ているかが知ろうとします。脅威にならないように、最初は近づきすぎず、かといって遠すぎない適切な距離をみはからって、ずっとついていきます。その過程で、そばにいても怖くない存在から、隣に居たほうが不安が少なくなる存在と感じてもらうようになりたいです。

 ついていくうちに、いずれ、混沌の中にも、目線が止まるところ(興味の対象)が出てきます。わたしたちの手を取り、興味の対象、つまり欲しいものを取らせようとします(クレーン現象)。この段階では、かれらは、わたしたちを自分とは別の一個の人間として認識できておらず、便利な道具ないし自分の身体の一部のように、全体ではなく部分として、捉えています。


 さて、混沌とした状況の中でも、しだいに興味を持って識別できるものが増えてきます。それは車や電車、標識やマークだったりします。周囲の音は聞こえるそばから消えていくので、その場にずっとあってイメージしやすい看板のような視覚的な手がかりで動きます。自閉症児は聴覚より視覚に訴えるほうが理解しやすいことが多いのです。

 こういった興味はしだいにこだわりになります。そのこだわりは療育に利用できます。回転物が好きな子は、何らかのくるくる回るものを標識に利用できるかもしれません。それを生活の手がかりに、しだいに類似する他のものへも関心が広がっていくかもしれません。


 その次の段階が、ミニカーや電車を並べる、位置にこだわるといった順序へのこだわりです。自分に合ったやり方で自分の手で世界の秩序を作ることで、安心するのです。その次が強迫的な質問癖。同じ質問を繰り返して同じ答を求める。自分なりのやり方で対人関係を発展させていくのです。

 質問を繰り返す中で、しだいにわたしたちを一個の人間全体として意識して、信頼してくれるようになってこれば、何かの拍子に背中に触れ、おんぶを要求してくるかもしれません。要求に応じながら、できれば、しだいに抱っこの姿勢に移行していくようにしてください。視線が合いやすいようにするための配慮ですが、こちらから強引に合わせるのではなく、子どもが自発的に視線を合わせてくるのを待ちます。彼が何に怯えるのか微妙な心の動きを知り、安心を保証します。そのためにも、わかりやすく安心できる空間を設定したいです。壁やついたてを利用して明確な仕切りを作ることで、空間の構造化を行います。その空間が、わたしたちと(ひいては世界全てと)、子どもたちの間に築く基本的信頼の、最初の基盤となります。

 安心できる空間で、不安を解消するために常同行為を続けることがありますが、そうする自由を保障しながら、じっと見守ることが重要です。あまりに長く続く際は、驚かさないように、低いゆっくりな声で、リズミカルに歌を口ずさんだり、そっと背中に手を触れてみたり、「こわがらなくていいんだよ、先生が隣にいるんだからね」などと話しかけたりするとよいかもしれません。こういった試行錯誤の中で築かれた基本的信頼があってはじめて、わたしたちの指示が子ども達に届くのです。それはより正確には指示ではなくわたしたちの祈りや願いかもしれません。

 わたしたちと子どもの間に信頼に基づく合意が成り立つなら、次は、スケジュール・カードやストップ・ウォッチといった視覚的な補助を利用しながら、次に何をすべきか、いつから始めていつ終わるか、具体的な説明、指示を行うことができます。いつ、どこで何をするかという時間、空間の構造化の下で、しだいに子ども自ら動けるようになっていきます。

 信頼できる療育者が作る、安心できる枠組みの中で日々を過ごすことで、少しずつ、新しいスケジュールの変化に応じることができるようになり、こだわりを少しずつ崩して、自ら新しいことに挑戦していけるようになります。例えば、工程の一か所だけ「待つ」所があることをあらかじめ伝え、そこだけ我慢させる。それを繰り返して徐々に変容を促していく。最初は単純なルールから初めて、徐々に例外を加えていくのがミソです。

 ひたすら画用紙にいろいろな車の絵を並べて描く子がいるとします。放っておけば楽しすぎて、画用紙をはみ出して床に書くくらい無秩序に書き続けて、収拾がつかないです。

 なので、車を描き続けること自体は、彼の好きな趣味として受容しますが、はみ出したり、スペースが足りなくなったりしないように、書き始める前に療育者と相談して、描きたい車種と台数を決め、均等なスペースにうまく納まるよう工夫する。一通り描き終えたら、再び相談して色を丁寧に塗っていく、というように「待つ」時間をポイントポイントに設定する。その前提として、療育者とお絵描きの計画を立てます。療育者と視線を合わせて、アイデアを交換して共有することも自然に学べます。



  ー言語と身体感覚、基本的信頼、遊びー

 アイデアを共有するためには言語を用いなければなりません。言語の意味を真に理解するためには、身近な大人の表情、声の調子、身振りとつながった形で理解する必要があります。身近な大人のイメージを自分の中に取り入れて、基本的信頼感(養育者との一体感)が得られていなければ、自然なコミュニケーションはできません。

 発達の凸凹がある子どもは、感覚を統合する能力の発達が遅く、他者の身体模倣(ジェスチャーを真似する等)も苦手であることが多いです。だからこそ1歳を過ぎて立ち歩くことができるようになったら、なるべく母親等の療育者と一緒に体を動かしたり、療育施設に通うことで補うことが効果的なのです。相手の反応を見ながらダンスしたり、ハイタッチしたりといった身体感覚を通したリズム感、呼吸を合わせることの繰り返しが大切で、それは誰かと一緒に遊ぶ時にも大切ですし、同時に、療育者も子どものリズム、反応を見て臨機応変に合わせていきます。


 遊びの中には、その人のこだわりも表現されます。そのこだわりを通して、言葉では表現しにくい現在の欲求、願望や、過去の精神的外傷、トラウマも再現されるかもしれません。ですから遊びの中には、子どもの成長の芽が隠されている一方で、遊びとは、その子の世界を広げていく非常に怖い行為でもあるのです(ちなみに、大人も幼児期から問題を引きずっていれば同様の問題は生じてくることになります)。

 身近な大人が「安全基地」となり、いつでもそこに帰れる前提があって初めて、子どもたちは周囲を「探索」し、他の子どもとの「遊び」に向かうことができるようになります。子どもたちは、遊びや身辺の課題を通して、身体感覚を伴ったイメージする力を育て、言語の理解、コミュニケーションを養わなければなりません。


 まだ、自己刺激や一人遊びばかりで、他者に関心を示さない段階、つまり自分と他者、ひいては世界が明確に区別できていない段階なら、例えば、お父さんが高い高いをする、くすぐるといった、一人ではできない遊び、大人が体を使った遊び(身体感覚を伴った遊び)を一緒にする必要があります。

 一人でブランコに乗せるのではなく、大人が押してあげる。大人が後ろについて、滑り台を一緒に滑る。幼児はまだ親と一体感があるので、親が自分と同じ方向を見ている感覚(共同注意)が愛着とイメージする力を育てます

 しだいに追いかけっこやボールの投げ合いなど、双方向の遊びに進んでいきますが、最初は子どもの後ろにもう一人ついて遊びの形を教えるのが望ましいです。それから向かい合って、手遊びや体操を一緒にする。親の真似をして動きを合わせることができるようなら、幼稚園の集団生活に移行できる頃あいです。


  「いないいないばあ」を大人にしてもらって笑えるのは、大人との二者関係を意識し始めた段階。次に覚える「宝探しゲーム」は宝を個人的な秘密(他者には教えない)に見立てる遊びとしたら、その次に「かくれんぼう」ができるようになるのが4~5才頃で、隠れることで他者との間に秘密を保持することができるようになった段階。つまり親から離れて友達と対等に遊べるしるしです。


 「ひげじいさん」

 手遊びの例として、園で習うリズム遊び、例えば「とんとんとんとん髭じいさん」は握りこぶしをとんとんする動きが、心身を安定させるツボ、合谷(ごうこく)のツボ押しにもなり、最後の「手はお膝」で楽しく姿勢を正すこともできて、とても理にかなっています。

「アンパンチ」

 赤白の旗の「赤上げて、白上げないで赤上げて」のように、大人が手のひらを掲げて、パンチしてよい時とダメな時の合図を送るのは、不注意、衝動性のコントロールに役立ちます。例えば「バイキンマン」なら叩いてもよいけど、途中で「ジャムおじさん」と言われたらパンチを止めます。両手のひらを掲げたら「だだんだん」の登場。やっつけるために連続パンチ、というように。子どもの好きなキャラで行うことができます。

 「バスタオルを使った双方向の遊び」

 自宅で気軽におこなえます。手巻き寿司(バスタオルで幼児をくるむ)、綱引き(綱にして引っ張り合う)、乗ってすべろう(そりのように乗って左右の端を手で持ち、前を引っ張ってもらう)、パンチ、キック(端を丸めてサンドバックのようにぶらさげる)、キャッチボール(丸めてボールにして投げ合う)と、バスタオル一つで、親との共同遊びがたくさんおこなえます。


 サリヴァン先生が、視力、聴力の障害があるヘレン・ケラーに、野外での遊びの中で、実際に井戸水に触れさせながら、「water」という言葉(の概念)を理解させたというエピソードは有名ですが、このように、遊び、しつけ、言語の獲得は全てつながっています。この逸話は、行動療法的に言語を教えたともいえるし、サリヴァンとヘレンの間のきずな、信頼関係があってはじめて行動に「実」が伴ったとも言えるのです。


 全く発語の無い子どもへのアプローチとして山中康裕は以下のように指導するそうです。

「具体的な事柄、ことに今子どもがしている事柄に即して「ことば」を話しかけるようにする。その際はわかりやすい言葉で、かつ明瞭に発音し、二、三度繰り返してやり、かつ、子どもに無理に言わせようとしない。甲高い声や、早口はよくない。低い声でゆっくり話しかけるほうがよい。できる限り、子どもと同じ高さに視線を保ち、子どもの眼を見ながら言うか、視線を避ける子には、そっと肩か背中に手を当て、言葉のリズムに合わせて背中を叩きつつ話すようにして、発している言葉が、こちらの意志を伝達しようとしていることの表現であることを多角的に知らせる方法とする。」


 その際に、子どもが、私たちの唇の動きを眺めて、口に指を突っ込んで、どこから発語されるのか確かめたりするかもしれません。それは子どもが物を拾って口に入れたりといった対象物との距離が取れず同一化する把握の方法です。続いて口をパクパクさせ、不明瞭ながら突然、発語することがあります。意味が聞き取れなくても、発語があったこと自体を認め、聴き入る姿勢を保ってください。でないと、せっかく生まれた言葉が消え去ってしまいます。あなたは決して孤独ではなく、守られているのだと実感してほしいのです。



ー3歳、5歳、10歳のステップ こだわりを考慮した具体的な療育指導 ー

 立ち歩き、言葉を発するようになる1歳から3歳までの間、親子で一緒に過ごしたり、療育に通うことが望ましいです。言語が発達する前の思い出は、おっぱいの触り心地(触覚)、母親の肌の香り(嗅覚)、母乳の味(味覚)、母親の声(聴覚)、まなざし(視覚)、泣けばすぐ来てくれて抱いてくれるといった身体感覚に根差しており、愛着形成の基盤となります。

 「三つ子の魂百まで」というように、3歳までに子どもの自我が芽生えます。この時期に親がよく付き合って子どものことをよく知り、将来も無理をさせないことが重要です。公園や児童館などで親と一緒に遊びながら徐々に他の子どもの存在を知っていきます。集団に参加させるのは、周りの子にならって自分の行動を修正する気持ちが出てきてから。その前に無理させると、子どもの負担になるばかりです。

 順調であれば、5歳(年長)で高度な判断力をつかさどる前頭葉が成熟し、コミュニケーションがめざましく伸びます。落ち着きなく立ち歩いたりしないで、我慢することができるようになってきます。就学前のこのタイミングで発達検査を行います。

 10歳を過ぎて(小4以降)感覚過敏がある程度和らぐと、親にちゃんと甘えることができるようになってきます。しっかり甘えさせて愛着形成が進むと、さらにコミュニケーションが伸びていくはずです。 


 幼児期早期には生活リズムの確立が最優先。愛着形成のために親子いっしょに活動が基本です。子どもが見通しを持てるように毎日のスケジュールを同じ順序にします。始める最初の手がかり(手を添える等の指示)と、終わりの合図もセットで(構造化)。例えばTVやiPadをずっと見続ける場合、終わりの合図を伝え、もっと観たい気持ちを受容し、これから一緒に別の楽しみをしようという気持ちを伝えます。

 生活指導の具体例として「夜は9時までに寝かせ、朝7時に起きて朝食」「親子で一緒に体操」「TVや動画は1日1時間、夜20時まで」。適度な栄養、決まった時間に食事、間食も重要。偏食を失くすために様々な食べ物を勧める。慣れるまで繰り返し。少しずつ幅を広げていきます。

 養育者が子どもと積極的に関わるために発達に合わせたレベル設定が必要。短期目標をスモール・ステップで設定する。緊急性、解決の難易度を考慮し、介入の優先順位をつける。できることから分かりやすく提示。指示は短く具体的に。見通しが持てるように終わり方も前もって説明します。


 身辺の自立

 身辺の課題はトイレット・トレーニング(時間を決めた誘導)とスプーンの自立から。それから服の着替え、入浴などの自立へ進む。子どもに前に大きなボタンがついた服を着せ、親が後ろに立って、手を取って必要な動きを導くというように、子ども目線の介助から始める。

 最初は課題をスモール・ステップに分ける。例えば、仕事の仕上げを教えて逆に進む。靴下のつま先もかかとも履いた状態でゴムを引っ張り上げることから始めて、次はつま先を入れてあげて、かかとから履く。最後につま先から履いていけるように。

 排尿、排便の成功から「すっきりした」「うれしい」という身体感覚。赤いイチゴをスプーンで食べて「赤いの」「美味しかったね」。タオルを見たら入浴、園のスモックを見たら登園というように、ジェスチャー等の身体感覚イメージと結びついた形でさらなる言葉の理解を促していく。

 親について一緒に行動する、実演することが大切です。親の言うことではなく「することを真似する」、肌で感じる、体感することで、生きた言語を使えるようになり、状況判断、コミュニケーションができるようになっていく。

 子どもから要求が出た時がチャンス。ミルクを要求したら、コップを持ってこさせる。遊びたいなら、一緒におもちゃを用意する。遊び終わったら一緒に片付ける。片付ける戸棚の場所まで具体的に伝えて一緒におこなう。自分も体を動かす。口で言うだけはダメ。可能な範囲で料理を手伝わせるのも、食わず嫌いの場合に、どんな食材なのか実感できる。

 嫌がることでも必要なことなら15回は粘り強く教えることを繰り返す。毎日なら2週間、週1回なら3か月はがんばる。抵抗が続く場合は感覚過敏が邪魔しているかもしれない。例えば、服をすぐ脱いでしまうのは素材の不快感(肌ざわり、蒸れる等)のせいかもしれない。


 集団でのルール

 幼児期中期は対人関係を意識し出す頃です。最初は親や先生、それから子どもたちに広がっていきます。失敗を恥じて親や先生に隠すかもしれませんし、友達の中でかけっこで一番になることにこだわったりするので、自尊心にも配慮していきます。発達段階に見合った集団参加をさせ、ルールを学ばせていきます。

   着席できない子どもには、好きなおもちゃを机の上に持っていき、そこで遊ばせます。次に、絵を描く、黒板の書き取り、計算をするといった簡単な課題を出し、1分以上、5分を目安に着席させ、だんだん時間を伸ばしていきます。先生が1対1で指導し、集団参加の準備をします。全てできるようにしようと思わず、まず着席する。書き取りをする等、目標を絞ってスモール・ステップでおこないます。できない場合は課題のレベルを下げてください。音楽の時間に先走ってピアニカを吹いてしまうなら、時間まで加配の先生が預かるのも一つです。

 

 最終的に、年長でルールを守る(着席する、順番を守る、待つ)、苦手なことにも応じる、がまんするといった姿勢ができているとよい。 小学校に入学しても落ち着かない児童には、外来で「クラスで一番えらい人はだれ? それは先生。先生の言う通りに動く」という一番上のルールを教え込み、その後ゆっくりと例外を教えていきます。

 嘘がつけず騙されやすい。おまけに影響されやすい子が多いです。同級生にそそのかされて休み時間を守らない。盗みや暴力など悪いことをしてしまう。逆におもちゃを取り上げられたり、仲間外れにされたりもします。だからなおさら、先生に相談する。先生に従う「というルールが有効なのです。「友達がそうしているから、チャイムがなっても校庭で遊んでいてよい」という風に流されてしまうのを防ぎたいです。

 先生が愛情を背景に、「それはしてはいけないんだよ」、「大丈夫、してもいいんだよ」ということを言葉や態度で示してあげてください。『窓ぎわのトットちゃん』の校長先生は、主体性を重んじ、自己肯定感を損なわないように、子どもたちを導いており、学ぶべき事例だらけです。

 自閉症児は勝手気ままに遊んでいるようで、その実、ちゃんと先生のほうに気を配っています。だから常にさりげなく気にしなくてはいけません。そうやって見守られていれば安心して遊んでいますが、それでも、ストレスがたまっって暴れてしまうことはあります。そんな場合も、ずっと観察していれば、とっさに包み込むように関り(力で抑え込むのではないです)、暴発の芽を摘み取ることができます。


 こだわり行動

 自閉症児は、世界との関りをこだわり行動で表している。こだわりで不安を打ち消そうとしている。こだわりを積極的に利用して療育につなげる。 一日のスケジュール、身だしなみといった役に立つこだわりを決める。総量は変わらないため、好ましいこだわりをほめて定着させて増やしていくと、その分、人を巻き込んだ有害なこだわりは減る(こだわり保存の法則)。不都合な決め事は、いきなりやめさせるのではなく、少しづつ、より適切な決め事に置き換える。子どもと家族の生活に支障をきたさないようにルールを決めていく。

 ジクゾーパズルのような、物の形をマッチングさせることへのこだわりがあり、心理検査で、言葉を用いない視空間スキルが優位なことが多い。口頭での指示(聴覚)だけではなく視覚に訴える。例えば、「みかん」と言って現物を渡すことを繰り返すと、音(言葉)と実物のみかん(言葉の意味)がマッチングする。

 行為と結果のマッチングにこだわってしまい、予期通りの反応を引き出すために悪いこだわりを繰り返してしまうことがあります。例えば、「友達をつねると、友達が泣く」を悪いことだとわかっていても繰り返すというように。

 友達にいたずらされて「殺してやる。包丁で刺してやる」と言う場合、友達に腹が立ってしまう気持ちはあって仕方がない。けれど包丁で刺すというとリアリティがあって怖いから、江戸時代の落語に「豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ」という言い方があるよ、と伝えて、本人が笑ったら成功。怒りに共感してもらえたら、怒りはやわらぐのです。


 儀式行動に繰り返し母親を付き合わせる。こういった挑発行動や巻き込みは間違った方法での世界(養育者)への関りである。不安が強くて、本来は養育者に甘えたいのだから、まず養育者自身が落ち着いて、叱責を控え対決しない。褒めることを増やして、良いこだわりに置き換えていく。一人で短時間座って取り組める課題を探す。他者を巻き込まないで一人で楽しめる趣味は重要。



 こだわり利用、こだわり置き換えの例

 道路に飛び出す子

 通学路は、親が前もってルートを教えて、手をつないで誘導するのが原則です。でないと気ままなマイルールにしたがって道草をして家に帰らなかったりはしょっちゅうです。その場合、絵本が好きなら、「赤ずきんは道草をしたからオオカミに食べられた」という怖い話を前もってお母さんが読みきかせておくことが有効だったりします。

 道路の向こう側に友達を見つけて急に飛び出してしまう場合、友達と遊びたい気持ちを超えるようなこだわりをあらかじめインプットします。子どもは同じ色のタイルや横断歩道の白い部分だけ渡りたがったりしますよね。その延長で、「道路のアスファルトは荒れ狂う海で地獄につながっている。ただし青信号の時だけ、横断歩道が浮き上がって白い橋になる。地獄の鬼も手を出せない」といった子どもがワクワクするゲーム感覚を取り入れます。成功すれば、親とユーモアやドキドキワクワクを共有できて、愛着も深まるかもしれません。

 標識に興味がある子なら、もっとシンプルに、交通ルールを一緒に学ぶのもいいかもしれません。今度は標識にこだわってお散歩に時間がかかるようになるかもしれませんが飛び出すよりはよいことです。


 教科書の補修をし続ける子

 授業中に先生にセロテープを求め、教科書の補修を繰り返す。うまく貼れないので何度も貼り替え、何度もテープを要求します。その要求を頭から否定するのではなく、「セロテープを貼り替えるのは2回まで。2回失敗したら、授業が終わった後に先生とやろうか」と提案。2回までというリミットセッティング(限界設定)と同時に、3回目は先生が一緒に行うというホールディング(抱え)をします。

 そうすれば単に制限や禁止をされるのではなく、挑戦するチャンスが与えられた上で、先生が最後は助けてくれる安心感を与えることができます。こだわりを療育に利用します。

 


★本人が理解できる伝え方、指示の出し方

 前もって予定やルールを決めておいて教える。注意するとき、感情的にならないように短い言葉がけであっさりと。「今はまる」「今はぺけ」といった声かけ。時計で時間を知らせる、合図のボードを見せるといった視覚に訴える方法をとります。

 感覚過敏がベースにあって、あいまいな情報より具体的な情報に過集中。聴覚より視覚情報が受け取りやすい。視覚イメージを細部まで記憶しているため、細部にこだわり、要領よく行動できない。結果として、時間、空間という、あいまいな概念の把握が難しい。そのためTEACCHプログラム(いつ、どこで、何をするか、予定時間、場所、行動など、生活環境を構造化)が有効な療育手段となる。

 センテンスを短く。内容を分割。一度に覚えることができる量の指示にとどめる。実物、絵カードを用いるなど、理解しやすい視覚コミュニケーション手段を用いる。

 予定をスケジュール表や絵カード等で視覚化して順番に並べる(時間の構造化)。教室、体育館、給食の部屋、遊ぶ場所などを分ける(空間の構造化)ことで、一つずつ順番に理解し安心して取り組むことができる。

 細かい段階に分けて指示(スモール・ステップ)。まずこれをやる、次にこれをするといった見通しを伝える。時計を使って始まりと終わりの時間を決める。始まりの合図で教室に入り、終わりの合図まで我慢することを徹底する。急な飛び出しをさせない。逆に、子どもが好きな活動をやめさせるときは、おやつや好きなTV番組など、切り替えやすいプログラムを用意する。

 重度の子どもであっても、わかりやすく限定され、情報をシンプルにした枠組み(いつからいつまで、どこで、誰と、何をするのか)の中でなら安心して授業を体験できる。繰り返し体験すれば定着していく。その際に支援者は大声を出さない。感情的にならない。前もって示されたスケジュール通りに無心に誘導すれば、刺激が減り、暴れる頻度も減る。


★対人関係の基本的なパターンを教える

 あいまいな言い方を避け、具体的に示す。こういうときはこうするというパターンを単純化して教える。こういったときはノーと拒否する。人に相談する等。ヘルプ・カード(「教えてください」、「休みたい」等)を作っておくと安心感につながる。

ただし似たような状況に応用する(一般化する)のが苦手なので、「こないだと同じでしょ」ではなく、個別に新しいパターンとして教えていく。

 自然な対人距離、マナー、モラルといった暗黙の了解、自己主張と他者への配慮のバランスをそのつど教えていく。でないと対人関係を被害的に捉え妄想に発展していく。 

 勝負に勝つことへのこだわりがおさまらない子に対して、「負けて悔しい」という気持ちは認める。その上で、自分も悔しいが友達も悔しいはず。勝ち負けを表に記録して示すなど、客観性、他者視点を持てるよう促す。

 他には、療育者が、椅子に座って俯き、じっとしている姿をして「負けたけど我慢」の具体例を身を以って示す。「かみつかない」、「怒鳴らない」などの約束カードを作り、守れたらごほうびを与える等。


 重度の子どもで意思表示できなくても、その内的世界に関心を持ち続け、息を合わせる(呼吸のリズム)、声の調子、身振り、表情を合わせるなどのペーシングをおこなう。例えば、子どもの行動に驚いたり褒めたりする。子どもが「やった」と体に力をこめれば、こちらもガッツポーズをする。振り子を眺めるのに没頭していれば、同じペースで場を共有する等、子どもの関心を尊重する。続けていくことで、最初は無関心だった子どもがこちらを気にするようになって、感情が了解可能になってくる。



★ダメ出しばかりではなく、できたことを評価する

 損なわれがちな自尊心、自己肯定感を高めるよう配慮。例えば、適切にヘルプを求めることができたり、一日パニックにならずに我慢できたのなら、一日の振り返りの時間(帰りの会)にそのことを褒める。振り返りは、「朝、ランドセルをロッカーに片づけたか」から「帰りに連絡帳を書けたか」まで二人で評価し、できた分のシールを貼る。

「何がダメか」だけでなく「何がOKか」を明確にわかるようにする。 ダメなことで止める必要があることは、冷静に「やらないよ」と伝えて止める。望ましい行動を教えることもセットで行う。例えば、「ウロウロしないで!」ではなく、「ここに座って(椅子に触れながら)」のように、否定文ではなく肯定文で指示すれば、できたら褒めることができる。

 これらを繰り返して、問題行動を適切な行動に変えていく。褒められて守られていることを確信して初めて、自主的に新しい変化を受け入れることができるようになる。 

 得意なことを見つけてほめて伸ばすようにする。好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、苦手なことを知る(好きなアニメ、ゲームの世界観から暴言、暴力を起こすことも)。



★作文による指導 ソーシャルストーリー(キャロル・グレイ)

 子どもが最近体験したことからイメージを膨らませる。療育者と子どもで話し合って文章化。「何をして、結果、どうなった」を意識しながら、子どもの表現を生かして書く。それを子どもと一緒に朗読し、それから模写してもらう。

 トラブルになりやすい状況の事実経過、背景にある理由、本人のふるまいが及ぼす結果、そこに関わる他者の意図や気持ちを理解した上での、適切なふるまいとその結果を説明。一般的には暗黙の了解とされていることや、他者視点を、自閉スペクトラムの認知特徴を考慮して説明(ex. 教室で静かに先生の話を聴く理由)。

 ~すべきという断定的な記述は避け、本人が自分の意思で学び、ふるまいを変えることができるように導く。柔軟性が必要。子どもの意思を支配する道具にしない。ストーリーの要点をノート、手帳にまとめ、自分でくりかえし確認することで、こだわりを減らすことができる。

 間接的で客観視しやすいが、それでもトラウマ体験は扱いにくい。扱うには、援助者にしっかりと守られている安心感が前提として必要。



ー成人期に向けた対応 進学就職ー

   社会適応のためには、「毎日決まった時間に起きて学校に通える」。「歯磨き、洗顔、朝食、着替えなど毎日決まっていることができる」。「書き言葉はひらがなで十分。具体的な物を10ずつ数えられ、100まで数えられたら十分」。「自分の気持ちを伝えられる。イヤなことを断る。わからないことをわからないと相談できる」。場面ごとに正しい対応を覚えていく。青年期以降に容易に行えるように、学童期に、歯科、耳鼻科、服薬の練習もしておく。


 ごっこ遊びは2才頃から始まり、他者の気持ちや立場を推し量る想像力、つまり「心の理論」につながっていく。定型発達では4才(年中)で通過するが、ASDでは10才以降(小4以降)になる。これまで気づかなかった、他者からの批判を受け止めることが可能となる。自身のユニークさを自覚。この時期にいじめに遭うと対人関係を被害的に捉えやすくなってしまう(この頃、母親に再び甘えることが必要)。

 心の理論を通過し、他者との関係に気づき悩み始めた頃が告知のタイミング。診断名は必ずしも必要ではない。理解に合わせて特性を具体的に伝える。高校生ごろ、社会に出る前のタイミングで、2度目のより詳細な告知をおこなう。 


 学童期にはいじめを受けたり、不登校の問題がある。原因は対人関係の失敗、勉強の苦手さ等。失敗体験の積み重ねから自己同一性の混乱が生じ、性別違和につながることもある。母親とイメージの中で一体化し、母親への巻き込み強迫が続くことも。

 優れた記憶力が災いし、過去のトラウマが薄まらずフラッシュバックしやすい。「虐めっ子の声や姿が幻覚となり、教科書に書かれた人間が全て虐めっ子の姿に見えて、教科書が開けない」。「女子に馬鹿にされたことで、過去の女子にまつわる体験が芋づる式に思い出され、女性全てへの強い憎悪になる」といったケースがある。感覚過敏にトラウマが掛け算される。


 進学就職に際して

    神経発達症/自閉スペクトラムの子どもが大人になって社会にうまく出ていくために必要な3つのこと。 

①「自律スキル」 ー 適切な自己肯定感を持ち、自分にできることを確実に行う。できないことは無理をしない等、セルフ・コントロールのために必要なこと。

②「ソーシャル・スキル」 ー 社会のルールを守ろうとする意欲があり(空気を読む協調性ではないことに注意)、自分の能力を超える課題に直面した時に誰かに相談できること。

③「合意」 ー 他者からの提案納得できたら従うこと。言いなりにならない。自律的に自分の意思で行動して、社会のルールを守りながら、他者と関わっていく。


 基本的には、特性に合った学問、仕事を選ぶ。ただし、本人のやりたいことをまずは優先する。やりたいことをやって失敗したなら、また相談して別のことにチャレンジできる。人に言われたとおりにして失敗したら、頼れるのは自分だけだと考えてしまい、相談できなくなるかもしれない。


 記憶が得意なため、あらかじめ教えられた作業で、スケジュールが決まっていて、個室や仕切りがあって、人と接する機会の少ない仕事が好ましい。一定の状態に維持する仕事。例えば、倉庫管理、図書館の司書、博物館の管理者、ホテルの室内清掃。

 いつ、ノーというべきか、いつ、ヘルプを出すべきか、事案ごとに伝えていく。間違いをはっきり指摘して正しいやり方を教える。困ったときに上司や仲間に助けを求めることが難しいことに注意。炎天下で水分や休息をとらずに働き続けて倒れることも。

 自由時間や仕事の後に仲間と遊びに行くこともできない。対人関係、特に異性関係についても、あいまいな対応をせず、誤りを指摘するほうが本人も喜ぶことが多い。

 その一方で、他者に合わせて過剰適応、やるべきことをしすぎる上に、やりたいこともたくさんあるので、睡眠不足になっている場合もある。やりたいこと、やるべきことを、ちょうどよいバランスに調整する。がんばりすぎて突然倒れないように、休暇や、趣味も大切。

 決まった作業の反復なら黙々と従い、優れた能力を発揮する反面、交渉するという概念がなく、嘘をつけない。失敗体験から過剰に人に合わせようとして騙される可能性。

 仕事を長続きさせるためには、仕事の成果を目で見てわかりやすい形で理解する。例えば自分が組み立てた部品が実際に工場で使われて自動車パーツになっていることを知るなど。給料をもらったら、現金を下ろして、ある程度は好きに使うことで発散する。



ー激しい問題行動が繰り返される場合ー

行動の理由を探る

 なんらかの言葉がけや対応が鍵刺激となってパニックを引き起こす場合がある。暴力は絶対に止めるが、問題行動にその人なりの理由があれば、それに伴う感情とともにいったんは否定せずに認め、信頼関係を築く。でないと問題行動がエスカレートする。

 すぐ教室から出ていく子どもを「落ち着きがない」と捉えるのではなく、「聴覚過敏があって騒がしいのが苦手だから」ではないかと考える。

 パニックの時はまず別室でクール・ダウン。静かな部屋で勉強することから始める(環境調整)。比較的静かな後ろの机で、授業を短時間受けて、少しずつ時間を伸ばしていく。我慢できなくなったら、教室の後ろで自由に体を動かすことを認めてもよい。達成できたらシールを貼る、ほめるといった形で適切な行動を強化する(トークン・エコノミー)。


 教室で楽しく学べるようになれば(主体的に行動できるようになれば)、以前と同じ騒がしさでも耐えられる。職場や公共の場でも同様で、例えば、レストランの配膳ロボット、掃除機の音等、特定のものが苦手な場合、それがどういうものか(脅威にならないのか)知識を得て理解できれば、平気になることがある。


 重度の子どもであっても、一見無意味でわけのわからない言動、行動にも、彼らなりの感情や意味がこめられている。繰り返すフレーズやイントネーションに意味がある。それを支援者が真似ながら共感の雰囲気を作る。その上で、手を引っ張ってきたなら、「いっしょにやろう」など、適切な表現を繰り返し伝える。信頼関係ができてきて初めて、「一度に使う石鹸は1プッシュ」など生活習慣の枠、仕事のルールを教えていくことができる。



突然の激しい暴力について

感覚過敏のため、小さい刺激を強烈な痛みに感じて反射的に払いのけてしまうことがある。危険行為をやめさせるために良かれとおこなった身体接触や言葉がけが、さらなる不快刺激となって、とっさの反射行動につながり、問題行動を繰り返す。


問題行動 → (叱って力づくで止める) → ごめんなさいと謝りながら教師を殴る 

→(さらに叱って力づくで止める) 

この場合、ごめんなさいという言葉も、ただ言っているだけ。感覚過敏に伴う反射行動がベースにあって、不快な場面を常同行動、行為チックのように繰り返してしまうサイクルが形成されている。繰り返すたびに過去の不快体験がフラッシュバックして暴力がエスカレートしてしまう。


 ふいに「がんばったな」と褒められ軽く肩をたたかれるといった、良い感情の声かけや軽いタッチでさえ、予測しなかった不快な騒音や圧迫感として捉えられてしまい、反射的に危ないものを払いのけ、結果的に教師に対する暴力となる。

 教師からしたら、いきなり殴られた。憎まれているのか?と感じ、つい感情的になって叱ってしまう。子どもからしたら、教師に驚かされて、つい殴ってしまっただけだから(反射行動だから)、殴ったことは意識していない。教師が怒ってきたことだけが印象に残り、「先生怖い」というトラウマになってしまい、ますます刺激に反応しやすい悪循環に陥るかもしれない。

 反射的な行動を繰り返して、常同行為に入ってしまっている時は意識レベルが低下してトランス状態。理性に訴えかけようとして、感情をこめた声かけ(コラ!やめなさい!)やボディタッチ(力で抑えつける)をすると、不快な騒音や圧迫感と受け取られ、さらなる反射的な暴力を呼ぶ。

 そうならないように、パニックが始まってすぐに、違うこと(例えば好きなアニメキャラ)に関心を移すように誘導する。これは、普段からの信頼関係や、子どもの理解が必要で、実際には誰もができるわけではない。


 危険な行動を起こさせないために、前もって、きっかけとなる刺激を極力しないようにする必要がある。そのためには、いつも同じ信頼関係のある教師が、大声を出したり、イライラしたり、怒った表情をせずに、例えば、見るだけで分かる形(絵カードやスケジュール表の張り紙、ホワイトボード等)で示し、無心になって誘導する。

 普段から手つなぎ歩行や決まった作業といった集団行動をおこなって、開始や終了の合図にも慣れさせておく。前もって教室から要らないものを片付け、大事なスケジュールを張り紙やホワイトボードに書いておく、といった工夫をする。前もって「これから何が起きるか」「どうするとよいか」を伝えておき、今、注目すべきことに集中させる。


 自分で勝手に行動できる「マイ・ペース」の状態が続いてしまうと、児童は何をしていいかわからず混乱してしまう。常同行為から自分の世界に没入して、しだいに意識レベルが下がり、理性の抑制が外れて衝動的な問題行動を起こしやすくなる傾向が強まってしまう。構造化されたユア・ペース(先生に指示されている状態)をうまく作っていく。

次に何をすればいいかわからないし、そもそも何が起こるかわからないという状態ではなく、一日のスケジュールや活動予定(ないし、新しい変更)があらかじめ知らされていて、いつでも視覚的に確認できる。余計な新しい情報が入らない状態で、かつ大人に守られている安心感を与える。


 始まりが感覚過敏に対する反射行動であったとしても、叱られたトラウマが掛け算されてしだいにフラッシュバックによる強化が入り、行為チックになっていく。また、10歳以降、感覚過敏が多少やわらぎ、養育者に再接近する(甘える)ときに、不適切な方法として、挑発行動や、こだわりへの巻き込みが起こり得る。それらは本人もコントロールできず常同化しているものだから、巻き込まれず対決もしてはいけない。しかし、その背後にある、受け入れてほしい願望、甘えを意識した対応をおこなっていく。


 甘えたい気持ちの裏返しで大暴れしている場合に、それを力で抑えつけるのではなく、受け止めるイメージで対応し、ひと段落した後に、投げたり、壊したりした物をいっしょに片づける。その上で振り返りをする。本当の気持ちへ気づいていくのを見守りながら、養育者(多くは母親)との愛着を再びはぐくんでいけるよう指導する。

 例えば、母親に頼んで、「一番大切なのはあなた」と語りかけてスキンシップしてもらうことを繰り返し試みる。その際に、子どもが最初は「お母さんは僕を嫌っている」と言って目を背けるかもしれません。本当に母親はそんな顔をしているだろうか?と問いかけて、子どもがやがて母の瞳に、憎しみの炎ではなく、悲しみの涙を見出すとき、何かがすとんと落ちる。腑に落ちる体験となります。




ローナ・ウィング、ドナルド・ウィニコット、ジョン・ボウルビィらの入門的な著作も参照しながら、杉山登志郎先生やアスペ・エルデの会の著作、吉田友子先生、本田秀夫先生の著作からも引用、ないし着想をいただいて、まとめています。