TOIN BASE Mとあれこれ話その3 2026年3月1日(日) nakamotoMizuki /真田柊太/杉野淳子
3月1日のTOIN BASE Mは真田柊太さんから。
彼も話していましたが、MCは説明し過ぎると曲のイメージを限定してしまうし、あまりに素っ気ないと、お客さんも寂しい。
先日、名古屋今池Tokuzoにトモフスキー還暦公演「三度目のハタチ」を観てきましたが、トモさんはとにかく曲の説明をするんですね。「俺も不安だ」「弱音を吐いていい」「誰一人取りこぼさない」など、トモさんの考えるパンクが伝わってくる。パフォーマンスの出来不出来と関係なく、人柄が噓じゃなく滲み出ているから最高。真田さんも演奏が何より雄弁でした。
2番手で大阪から杉野淳子さん。ピアノ弾き語りジャズ・ロック。椎名林檎や宇多田ヒカルのバラードが好きな方へとかと書くのが一番わかりやすいんでしょうが、この日の彼女のパフォーマンスから私は、2001年9月29日(つまり911同時多発テロの直後)、Radioheadの来日公演で聴けた「ピラミッド・ソング」を思い出しました。
病み上がりの時期の演奏だったようですが、自己紹介のMCの後、らせん階段を登っていくように演奏のスケールが増し、感情が増幅されていきました。最初のほうで、「今日は満月ですね・・・」とつぶやいた、その月まで「fly me to the moon」するかのよう。
でも、彼岸に行ってしまうのではなくて、家族への思いを歌う「乞う」のように、故郷の自然に足を降ろす鍵盤の連なりもある。彼女がよく使う表現で「ライブに訪れてくれることは、人生の一部をいただいているということ」。そういった祈りが、彼女の叩く一音一音にこめられているように感じました。
最後に岡山からnakamotoMizukiさん。少しハスキーな倍音ヴォーカル。真田柊太さんがスガシカオなら、彼は山崎まさよしのような。しわがれたロマンチスト。
杉野淳子さんが満月に言及したから、月について歌ってる自作曲はあったっけなあと考えて、思いつかなかったからと、星を盗みに行くと歌う曲を披露。
都市伝説で、夏目漱石は「I love Youは日本語に訳すなら月がきれいですねくらいがちょうどよい」と言ったといいます。それに習えば、「星を盗む」とは「あなたを振り向かせたい」。そこまで考えてではなくて、彼の現場感覚から生まれた即興でしょうが。
彼の歌を聴いていると、「深く考えすぎないで、悩みすぎないで、一息ついて、まっいいかと思おうよ」というメッセージが伝わってきます。なぜかといえば、彼自身も常に悩んで不安だからではないか、そう感じさせるような、「まっいいか」。
さっきも書いたけどTokuzoのライブでトモフスキーが「俺も不安だ」と叫んだ時、観客の女性が泣いていました。
Mizukiさんがアンコールの拍手をもらったとき、即「いただきます」と言って、でも喉が枯れているからか、「水だけもらっていいですか」と言って、でもその態度を「はしたないですね」と自己評価して、「(演奏する前に)話をしていいですか?」と言って、「(僕は)わがままだね。」と、自分の話ばかり、言い訳ばかりしようとして我儘だねというようなニュアンスで。それから話し出したのは。
「県外に出る勇気をくれたのは自分の音楽だし、自信がなくなるのも音楽に関してだし、今もがくがく足が震えている。初めての(味方がいない)場所で演奏することも増えてきたし。つい攻撃的な音楽をやってしまうし」
やっぱりそうなんだなと思った。だから彼の曲は「まっいいか」と私に思わせてくれるんだな、と。彼の「ストーリー」という曲は、偶然だろうけど、エリック・クラプトン「Tears In Heaven」のイントロに似たギターで始まります。この曲はクラプトンが4歳半で事故で亡くなった子どもを想って作った曲だそうで。
不安や悲しみで押し潰されないように。
大切な人が事故で亡くなるということは、誰の身にも起こり得ます。杉野淳子さんが「乞う」で歌っているように、どんなに神に祈っても、完璧に避けることはできやしない。
だからせめて、大切な人とはけんかを続けない。笑顔で過ごしたい。愛する人のために、みんなが楽しく過ごせるように。
まっいいかと思えるように。彼らの弾くギター、叩く鍵盤の一音一音が祈りかもしれないし、対話でもあるし、瞑想やマインドフルネスでもあるし、何より、シンプルに演奏者と観客のコミュニケーション、相互作用で、何かを少しづつ整えていく。
TOIN BASEMは、名古屋から近鉄/JRで三重県の桑名へ。隣接する三岐鉄道北勢線「西桑名」駅から「穴太(あのう)」下車。南へ徒歩8分。音が良い店です。スパゲティとかピザとかも食べられます。
2024年7月に桑名から東員町に移転。原田真二、ファンキー末吉(爆風スランプ)、ギターパンダ、ワタナベマモル(グレイトリッチーズ)といったロック・レジェンドや、坂田明のようなジャズの重鎮など、素晴らしいミュージシャンが日々出演しています。