児童精神科 成人期に向けて

  社会に出るためには、知的能力(IQ)より適応能力(社会性)が大切です。   障がいの有無にかかわらず、社会で生きていくためには、「社会のルールの中で、自分で判断して、自分でできることは自分でする。できないことは無理せず、信頼できる人と相談する」ことが大切です。

 そのためには、適切な自己肯定感を持って、自分の希望を人に伝える。他者の提案に従うのは納得できた時だけ。言いなりになってはいけません。嫌なことは断ってください。空気を読んで無理して従わなくてもよいのです。自分の意思を大切にしてください。



 まず何より生活リズムを身につける!

 毎日決まった時間に起きて学校に通える。様々な集団に慣れて5時まで部活やデイサービスに行ければ、就職しても5時まで働くことができる。就労のための生活リズムを身につけるには時間がかかる!高校3年になってからではなく幼少期から身に着けていく。

 身だしなみ(ハンカチを用意など)、歯磨き、洗顔、朝食、着替えなど毎日決まっていることができる。

 挨拶できる。気持ちを伝えられる。イヤなことを断る。わからないことを相談できる

 場面ごとに正しい対応を覚えていく。公的な場所、歯科、耳鼻科に行くことができるように。服薬の練習もしておく。

 学校の勉強は小学4年生レベルでよい。書き言葉はひらがなで十分。具体的な物を10ずつ数えられ、100まで数えられたら十分。勉強ができても挨拶ができないと仕方ない!

 発達特性のある子の不登校、ひきこもり、ゲーム依存は、「しばらく様子を見ましょう」ではなく、原因を見つけて対策。動機付けして、毎日学校やデイ、職業訓練に通えるように。


 進学就職に際して

 基本的には、特性に合った学問、仕事を選ぶべきですが、本人のやりたいことをまずは優先してください。自分で決めることが大切です。メリット、デメリットを承知したうえで自分で選択してやりたいことをやって失敗したなら納得できます。また相談して別のことにチャレンジできます。人に言われたとおりにして失敗したら、頼れるのは自分だけだと考えてしまい、相談できなくなるかもしれません。

 いつ、ノーというべきか、いつ、ヘルプを出すべきか、事案ごとに伝えていく。間違いをはっきり指摘して正しいやり方を教える。困ったときに上司や仲間に助けを求めることが難しいことに注意。炎天下で水分や休息をとらずに働き続けて倒れることも。


 あらかじめ教えられた作業で、スケジュールが決まっていて、個室や仕切りがあって、人と接する機会の少ない仕事が好ましい。一定の状態に維持する仕事。例えば、倉庫管理、図書館の司書、博物館の管理者、ホテルの室内清掃。


 ToDoListを作る。

 例えば「箱に片付ける」であれば、「1.散らばった物を一か所に集める。2.3種類に仕分けする 3.それぞれの箱に入れる。」というように、さらに手順を具体的に分ける。仕事を続けるうちに、手順の中で間違えやすい所を修正していく。


 コミュニケーションが苦手なら、一度に複雑なことは伝えようとせず、簡単なあいさつや会話を積み重ねる。とっさの会話ができなくてもメールや筆談、手紙、スマートフォンのアプリを使うなど。

 頭の良さより、柔軟な適応能力が大切。名古屋大学を出ても場面緘黙では就職できない。どうすれば?

 あいさつされたらおじぎする。困ったら手を挙げて知らせて筆談する。こうすれば言葉が無くてもコミュニケーションできるし、相談もできる。(言葉が出ることが目的ではなく、うまく仕事をすることが目的)

 


働く能力がある人の動機付け、就労意欲を高めるためには、具体的な説明。

B型と一般就労の平均月収の差は10倍!(1.8万と18万)

一般なら、毎月ディズニー、毎週スシロー行けるよ。 それならやりたい!と思える。

 仕事の成果を目で見てわかりやすい形で理解する。例えば自分が組み立てた部品が実際に工場で使われて自動車パーツになっていることを知るなど。給料をもらったら、現金を下ろして、ある程度は好きに使うことで発散する。 

 自由時間や仕事の後に仲間と遊びに行くこともできない。対人関係、特に異性関係についても、あいまいな対応をせず、誤りを指摘するほうが本人も喜ぶことが多い。

 決まった作業の反復なら黙々と従い、優れた能力を発揮する反面、交渉するという概念がなく、嘘をつけない。失敗体験から過剰に人に合わせようとして騙される可能性。過剰適応して無理がかかっていることもあります。やるべきことをしすぎる上に、やりたいこともたくさんあるので、睡眠不足になっている場合もある。やりたいこと、やるべきことを、ちょうどよいバランスに調整する。がんばりすぎて突然倒れないように、余暇や、趣味も大切。



 中等度以上の知的発達症で、教師や職場の上司、施設職員とトラブルになる場合。

 表面的な要求が際限なく繰り返される状態。すぐに話を聞いてほしい。おやつを食べたい。病院にすぐ行きたいなどの訴えが続き、施設職員の「またか」「うんざり」感を引き出し、てしまう。その結果、職員の対応が、「明日まで待てと言ったでしょ。今はダメです」という、後から押し付ける形になってしまう。

 中等度の知的発達症では、小学校低学年程度の能力しかないことが多いので、前もって約束ごと、ルール、1日のスケジュールを決めておくこと。図表で示す視覚的構造化を行い、「正しい行動と間違った行動」をセットで説明する。

 間違った行動(「すぐ連れてって」と要求)が減って、正しい行動(当日まで待つ)が増えてくれば、本人を褒めることができます。そして、待つこと、禁止することが増えすぎないように、それよりも本人が自主的に取り組める課題を与えて、達成できたら褒めることを繰り返したいです。


 本人が求めているのは表面的な要求それ自体ではなく、誰かに認めてもらえる、褒めてもらえる体験であることが多いです。「お菓子や頓服薬が欲しい」のではなく、無意識に母親の愛情を求めている場合が多いです。

 約束やルール設定、構造化は大切ですが、そこにこだわりすぎると本人を厳しく圧迫するものになってしまうので、子育てのように、本人と職員の対等な信頼関係の中で、本人が進んで取り組めるようにしていきたいです。

 例えば本人の劣等感、自己肯定感の低さ(親に愛されなかった哀しみ)を受け止めるような雰囲気の中であれば、多少は注意したり、叱ったりしても関係は崩れません。

 



親が亡くなった後の準備

実印を登録(自分で手続きするために必要)

マイナンバーカードを身分証に。(障害者手帳を出すとアパートが借りられない恐れ)

通帳二つ作って、本人には少額入ったものを。 大きな額は任意後見人が管理。 

財産は生命保険にすれば、その子しか受け取れない(土地や貯金は財産分与の対象)

生命保険信託なら親が死んでも、本人とグループホームに毎月お金を支払ってくれる。