しばたやん子との対話 ~ TOIN BASE Mとあれこれ話その11

 大阪府富田林市出身、平成生まれ昭和育ちの唄うたい、しばたやん子が近々アルバムを出す!ということで、彼女を紹介する記事を勝手に作りたいと思い、先日の三重県員弁郡は東員町のベースMでのワンマンライブ音源を聴きながら書いています。

(ちなみにこの記事はアルバムが無事リリースされるまで、少しずつ加筆訂正されるかもしれません)


 先日、2026年7月28日のベースMでのワンマンライブは2部構成で、前半9曲とアンコール1曲は既発シングル中心。後半9曲がアルバム収録曲(当日のフルセット映像)で、アルバムのタイトルは『春の居残り』。収録曲「ホタル」の歌詞の一節から。

 ホタルが春先は二ヶ月近くサナギとして地中で過ごさなければならないことを「居残り」と表現しているのかと思ったら、やん子さん曰く。

 「私の中では、遅れてきた青春、ちょっと違うけど、いまだに青春してる、みたいな意味です」とのこと。

 「ホタル」は最近のライブではよくラストの曲として演奏される、いわば、彼女のキラーチューン。元々はベースMで5月末に毎年開催されるホタルフェスにインスパイアされて生まれた曲で、ベースMのテーマソングのような歌。おそらくアルバムの中で1番ストレートな、良い意味で捻りのないパンク・ナンバー。初夏の水辺にしか住めないホタルのように、例え短い人生でも、どんな場所を与えられても、精一杯生きようという意思が伝わってくる。


 「ホタルは、仰る通りMに集う我々演者や、お客さんのことを歌っています。Mだけではなく、どこかしこの音の鳴る場所に。

どちらかというと、我々人間は"ここ"じゃなくても生きていけるんだけど、"ここ"にこだわって生きてんだって覚悟だったり。ほんとは花火のように爆発したいのかもしれないけど、淡くとも光を放っているぞという気持ちといいますか......。

楽しい過去に戻りたいときもある、でも今が1番楽しいはず、楽しむべき、みたいな。ある意味、虚勢を張ったうたなのかもしれません。

そんなミュージシャンがここで遊んでるから、みんなこいよー!って、日々生活を頑張ってる人に、楽しもうぜー!って叫んでいるみたいな。」

 この曲について彼女は上にように話している。

 何かにこだわる覚悟、限りある命、大切な過去も、今を生きることも大切に、というテーマは、そのまま、アルバム全体を貫く信念というか、やん子イズムのようなものが脈打っています。

 例えば、曲の雰囲気も近い「レシピ」。この曲は、あれもこれも食べたいという出だしの歌詞や曲調からTHE BLUE HEARTS「夢」を少し思い出します。

 ライブ定番曲「芋の水割り」の印象的な一節「ピストルズ聞いてんのか」を持ち出すまでもなく、ピストルズ武道館の前座を務めたTHE HIGH-LOWSのように、彼女の紡ぐポップなメロディーの奥にはガツンとしたパンク・スピリットがある。フラワーカンパニーズ「深夜高速」カバーを時々披露しているが、彼女の音楽的ルーツはどういったものなのだろうか。


 実際に彼女に聞いてみると、別にロック一辺倒だったわけではないという。母親の好きなポルノグラフィティや、父親の好きな松田聖子も好きだった。中学までは運動部だったから、実際に楽器を手にしたのは高校の軽音部から。「男はスピッツ、女はGO!GO!7188をカバーするのが課題でした」と笑って回想する。そういえばベースMの店名にちなんでZONEを弾き語った日もありました。

「パンク、ハードロック好きな先輩からクラッシュやAC/DCを教えてもらいました。日本のはスターリンやタイマーズを聴いていて。青春パンクはあまり聴かなかったので、パンク好きと言われても話が合わなかったり。「芋の水割り」でのピストルズ云々は語感で選びました。」と、歌詞が実体験に由来するものだとほのめかす。

 じゃあ、芋の水割りも語感から?と問うと、「いえ、(麦ではなく)芋が好きです」と。


 「レシピ」の話に戻ると、「生きるために必要なもの、水と空気とあなたのご飯。生きているうちにあと何回食べられるのだろう」という一節が大好きなのだが、この歌詞の「あなた」は素直に母親と解釈してもいいし、人によっては恋人のこと、母親がいなくて父親や兄弟にご飯を作ってもらっていた人もいるだろう。ただ、ここでは単純に、その人を養い、育てる母親的なものを歌っているとしよう。両親に充分甘えた過去が、胸にあって、それが支えになって、今、ここでの人生を生きる、というか。

 生きていくために必要なもの、安心できる場所、というのはザ・タイマーズというかRC SUCCESSION、THE BLUE HEARTSの表現の核にあるものではないかと思うし、表現の差異はいろいろだが、THE STALINやじゃがたら、筋肉少女帯といった孤高のロック・バンドたちだってそう。その表現は時には、大切な何かを見失う、大切な人に見捨てられる。大切な人に甘える、攻撃する、様々な形で現われる。そういえばジョン・レノンだって。


 やん子さんの曲も、当然、様々な方向性があるが、今回のワンマンライブで、前半の過去の曲、後半の現在の曲を比べると、過去の曲のほうが、より自分自身にフォーカスされた内省的な雰囲気が漂うのに対して、現在の曲ほど、大切な誰か、他者の存在がクローズ・アップされてきている気がする。そのことを告げた際、彼女は明快にこう言い放った。


 「昔は自分のために歌っていた。今は誰かのために歌っているからですかね。」




 Toin Base Mは、名古屋から近鉄/JRで急行/快速で約20分の三重県の桑名へ。隣接する三岐鉄道北勢線「西桑名」駅から「穴太(あのう)」下車。南へ徒歩8分。音が良い空間。スパゲティとかピザとかも食べられます。

 2024年7月に桑名から隣町の東員町に移転。原田真二、ファンキー末吉(爆風スランプ)、ギターパンダ(DEEP & BITES、忌野清志郎 & 2・3'S等)、ワタナベマモル(グレイトリッチーズ)といったロック・レジェンドなど、素晴らしいミュージシャンが日々出演しています。