岡田尊司『母という病』から
ボーダーライン・パーソナリティー症や、薬物・アルコール依存症、摂食症といった背景のある人の母親(ないし他の養育者)に共通する特徴として、岡田尊司は以下を挙げています。
他者の気持ちを汲み取り、理解することが苦手、ないし避けている人が多い。
母親自身も情緒不安定なケースもあるが、一見、安定しているケースであっても、子どもの気持ちを汲み取り、子どもの立場に立ってやりとりすることがことがうまくできない。
表に出る言動、行動だけで判断してしまい、その背後にある気持ちを考えることができない。過程を見ずに結果だけ見て、できないことや欠点ばかりに注意が向く。
そういった養育者に相談しても、よけいに非難されてしまうだけなので、子どもは下手なことが言えず、問題があっても、自分で解決するしかなくなってしまう。
子どもが否定的な体験を吐き出してきたとき、養育者は、それを正面から受け止めなければなりません。その言葉に耳を傾け、子どもがどこで傷つき、何に矛盾を感じてきたか。その思いに向き合う。自分を弁護せず、その苦しみ、痛みを共有し、一緒に泣くこと。
しかし、そうした態度がいつまでたっても、養育者に期待できない場合は、子どもはいったん養育者から距離をとって、中立的だが思いやりを持った人と関係を持つことが必要です。信頼でき、価値観や関心をある程度共有し、なんでも話せる存在で、いつも変わらない安定性をある程度備えていることが条件です。
ただし、切羽詰まっていると、一見優しいが、危険な相手を信じすぎてしまう場合があります。「君のためを思ってやっている」「他の同僚は君の悪口を言っている。俺だけが味方」とか、極端な場合、「なんでもぶっ飛ばしてやる」というこわもては、ぶっ飛ばす相手がいなくなったらあなたにさえ危害を加えるかもしれません。だって、なんでもぶっ飛ばすんですから。
見かけの優しさ、調子のよさに騙されないためには、他者の意見にも、適度に耳を傾けましょう。「あの人は最初は優しかった。たまたま不機嫌なだけ」などと不都合な事実から目を背けず、何かひっかかるものを感じたら、冷静な第3者に相談しましょう。
そして、問題にうまく対処する技術を学ぶ必要があります。
大きく深呼吸して気持ちを落ち着けたら、まず、事実と気持ちを切り分けて、事実だけ冷静に見つめること。自分の気持ちと他人の気持ちもしっかり区別する。自分の望むことと、相手が望むことをはっきり分ける。
人は怖れていることや期待していることを事実と思い込みやすい。嫌われているかもと自分が怖れている内に、本当に相手が自分を嫌っていると信じ出すかもしれない。逆に相手に自分の意に沿わぬことを命令され、押し付けられても、それを自分の望むことだと思い込もうとするかもしれない。
思い込みは傷ついた気持ちが映し出された過去の幻影です。幻に囚われて過剰反応してしまうことで事態を余計悪化させてしまうかもしれません。
これまで否定され、傷つけられてきたから、たとえば、いつも挨拶を返してくれる同僚にそっぽを向かれたとしたら落ち込みますよね。
そこで、自分に言い聞かせる自己暗示の言葉を用いる。
「他のことに気をとられていたんだ。別に意味はない」
自分をのけ者にして他の人がおしゃべりで盛り上がっていたとしても
「みんながただ集まって盛り上がっていただけだ。別に意味はない」
この「別に意味はない」は「~ということがあった。けれど終わった」など、自分に合う言葉でかまいません。
別の方法として、自分の身に起きたことが、別の人に起きた場合を想像してみる。
自分が信頼する安定した人格の人を思い浮かべて、その人だったら、どう受け止め、対応するか考えてみます。すると事態を客観的に冷静に眺めることができます。もっといい受け止め方や反応の仕方が見えてくるかもしれません。
だから、日頃から、安定した愛着スタイルの人と接して、その人の考え方や行動の仕方に触れていることが大切なのです。
実在の人物である必要はありません。
伊藤絵美は、赤塚不二夫の漫画『天才バカボン』のパパがそばにきて「これでいいのだ」と言ってくれるイメージを思い浮かべるそうです。パパはいいかげんな人だと思われているけれど、本当はとても愛情深く受容的で、人生を真剣に楽しんでいる人として作中で描かれています。
私は『DRAGON BALL』の孫悟空を思い浮かべたいです。絶望の未来世界でブルマが息子に語ったように「どんなとんでもないことが起きても必ずなんとかしてくれそうな、そんな不思議な気持ちにさせてくれる人」だからです。